月曜日, 5月 11, 2009

東京中央線通学回想録

 電車の中に新入生や新入社員の方が増え、少し混みあう時もでてきました。
 とはいっても私の使っている路線は比較的空いているので、運がよければ座ることもでき、混んでいても押しつぶされることまではありません。

 私は中学、高校の6年間、東京都心の中央線で通学していました。
 通勤ラッシュ時間帯の中央線といえば、乗車率が時に200パーセントにも及ぶ“超満員電車”です。
 ひとつの車両の乗車率が200パーセント(つまり、定員の2倍の人間がいる)という状態が想像外の方もいらっしゃると思いますので、思い出せる範囲で書いてみると、

・ 何かの拍子で膝を曲げるとその形で動けません。
・ 手荷物から手を離しても床に落ちません。気を抜くと人の間に挟まれながら漂流してどこかに行ってしまいます。
・ 背が小さい場合、床に足がつかない状態になることがあります。(これは伝聞ですが)

 こんな状態でたいした混乱もケガ人もなくいられるのは、乗車している人びと全体がひとつの暗黙の了解や約束事によって動いているからです。
 言葉ではうまく説明しづらいのですがあえて説明すると、たとえばA駅で降りたい人は大体ここの辺に立ち、B駅ではこう動く、など、乗車した人がどの立ち位置にいて、どのように動かなければならないかという「流れ」が決まっているのです。

 この「流れ」に逆らうとどうなるでしょう?4月や5月はまだこの約束事に慣れない方が相当数いるため、無理をすれば自分の動きたい方向に動くことも可能なのですが、その時期を過ぎてしまうと、流れに逆らうのは非常に難しいです。
  暗黙の了解のうちに動く50人の群れに、1人の人が逆らえるでしょうか?「私、降りません!」と叫びながらホームに押し流されていく人を見かけたのも1回や2回ではありません。

  周囲の人があまりに整然と動いているので、初めのうちはテレパシーや超能力でも使っているのかと思いましたが、毎日通っていると自然とできるようになっていました。
 この「流れ」ですが、逆に言えば「見知らぬ他人の動きを察知した気配り」とも言えます。
 次の駅で降りそうな方に気づいたら、その人が動きやすいようにしてあげる、気分の悪い方を席まで誘導する(ような流れをつくる)などの車内の行動から、電車の中以外の場所でもちょっとしたことに気づくことができるようになっていました。

 とはいえ、会社や学校にたどり着く前にかなり体力を消耗していることも確かです。
 よい経験だったとは思いますが、もう一回経験するのは遠慮したい思い出です。

by 安藤