木曜日, 12月 25, 2008

「伊勢の森から」

 先日、伊勢神宮の宮域林(みやいきりん)へ行く機会がありました。

 伊勢神宮は「式年遷宮(しきねんせんぐう)」といって、建物を20年ごとにまったく同じ形に建て替えています。
 理由は神域の清浄さを保つため、伝統建築の技法を伝えるためなど諸説ありますが、690年から(中断はあるものの)続いている神事です。
 (ちなみに、次の遷宮は2013年で、すでにさまざまな神事がとりおこなわれています)
 「宮域林」というと神聖な天然林、という感じがしますし、実際神宮のごく周辺はそういった古い森なのですが、「宮域林」とされている森林のほとんどは、式年遷宮で用いられる木材を供給するため人の手で植林された人工林です。

 植林がはじまったのは比較的新しい大正時代なので、現在の伊勢神宮には宮域林からの木材はほとんど使われていません。案内の方の話によると、木材は植えてから使用できるまで非常に長い時間がかかるため、初の植林から90年後となる次の遷宮で、やっと一部について宮域林の木材を使用できる見込みということでした。
 ただ、大きくなりそうな木を予測して間伐していったものの、いざ木材にしてみると中に穴が開いていて使用できない・・・ということもあるため、今からどの程度自給できるか予測するのはとても難しいそうです。
 
 案内の間、いろいろと興味深いお話をうかがったのですが、その中でも
 「私は、自分の仕事が完成するところを見られないんですよ。それを見るのは私の次か、次に同じ仕事をする人。」
 「木のサイクルは非常に長いため、今のことだけでなく、将来のことも見据えて仕事を行わなければうまくいきません」
という言葉が心に残りました。
 その場では、「スケールの大きな話だな。自然相手ならではだな・・・」
とだけ思っていましたが、その後に思い返したとき、(そこまで長い期間でないだけで)自分の仕事も同じだと気づきました。

 自分の仕事や日常を考えると、今週はどうするか、今月はどうするかなどといった短期的な目標を意識するのは簡単ですが、年単位となると難しくなります。まして、それ以上の期間となると、相当意識的でいなくてはそうした視点があることすら忘れがちです。
 もちろん、日々の積み重ねも重要ですが、自分の行っている仕事が長期的にどこに向かっているのか?を意識するために、年単位、さらにはもっと長い周期でものを考えていく視点についても身につける必要があるのかもしれないと思いました。
 
by 安藤