木曜日, 6月 19, 2008

「話し上手は聞き上手」

「コップ理論」という言葉をご存知でしょうか?

誰かに会ったときに、お互いに話をしたいことがコップからあふれそうなほど溜まっている。このままでは、相手のコップに自分の話したいことを注ぎ込む余地は無い。そこで、聞き上手の人は、別の小さなコップを脇に用意して、自分のコップの中身の半分ぐらいを、その小さなコップに移してあげる。

そうすることで、自分のコップに空きが出来て、相手の話を受け入れることができる。相手の話が注ぎ込まれることで、相手のコップにも空きができ、自分の話も相手のコップにも注ぎ込むことができて、お互いに注ぎ注がれながら会話が弾んでいくというものです。

この話を聞いて、私が思い出したのは、明治の元勲、大久保利通のところに、中江兆民が留学からの報告をしに行った時のエピソードです。話が始まってから大久保はずっと目を閉じて聞いていて、それを眠ってしまっていると思った中江が怒り出すと、「いや、私が目を開けていると話しにくいだろうと思い、目を閉じていたのだ」と答えたそうです。

政府の権力者である大久保が、「自分が威圧するように目を光らせていては、言いたい話も出来ないだろう」と考えて用意した、彼なりの小さなコップだった訳です。もっとも眠っていると思われてしまっては、ちょっといただけない気もしますが。

そういえば、事務所の後輩たちから報告が上がってくる時に、私がパソコンを叩きながら画面から目を離さずに聞いていることがありますが、これは忙しさに追われて横着して聞いているからでは決して無くて、大久保のように、プレッシャーを与えずに、リラックスして話をしてもらえるように配慮しているだけなのですよ(笑)

by 小林雄