金曜日, 3月 10, 2006

時代の変化が目の前に

「格差が出るのは悪いことではない」小泉総理の参院での発言です。
成果主義が騒がれ出した頃から、一億総中流である日本も、いずれはアメリカ式の階層社会になると言われてはいましたが、この発言によってその流れは間違いなく加速するでしょう。

ここ数年の間に日本社会は大きく三層に分かれるのではないかと私は考えます。一つ目は「ルーティンワーカー」、指示された仕事のみを行い、コスト削減の対象となる人たちです。二つ目は「インプルーバー」、利益を上げるための二大要素である付加価値とコスト削減を実現させるために、様々な改善を施していく人たちとなります。三つ目は「イノベーター」、自らの業界内を飛び越え、他の業界にも大きな影響を及ぼし、パラダイム(新たな概念)を生み出す人たちで、ごく一握りしか存在しない特別な人たちになります。

「ルーティンワーカー」の人たちは、自らの存在価値を単価の安さにより見出されることになります。そのため、契約社員やパート・アルバイトによって代替される分野では、正社員がこれらの契約体系に置き換えられていくようになります。現在でも、小売・流通の分野では置き換えが進み、店長を始め全従業員がパートの店舗なども出てきています。また、移民の増加やロボットの進化により、職自体を失う可能性もあります。

対して「インプルーバー」は自らの能力にのみ存在価値があるため、高額の報酬の対価として、仕事でその能力を発揮するだけでなく、私的な時間を費やしてでも能力維持・向上を図り続けなければなりません。それが出来なくなったときには、その地位からの転落が待っているのです。

競争を捨てて流れに身を委ねる「ルーティンワーカー」と、競争社会の中で戦い続ける「インプルーバー」、普通の人が選べるどちらの生き方も、終身雇用と年功序列に守られてきた時代と比較すれば、遙かに厳しいものになるでしょう。時代の流れとはいえ、この変化が良いことなのか悪いことなのか、その判断は本当に難しいのではないかと私は思います。

by 小林 雄