金曜日, 8月 27, 2010

役員借入金の対策はお済みですか?

中小企業の決算書を見ると、借入金の中に社長など同族関係者からのものが含まれていることがよくあります。資金繰りに困ったときには、銀行よりも身内から借りた方が手続きも楽ですし、金利コスト等を節約することができます。ただ、借りた後、返済されずに恒常的に残高が残っている場合が多いかと思います。
役員借入金には、節税や銀行向けの対策等がありますので、その方法をご紹介します。

(1)決算書の表示
役員借入金は負債ですが、銀行等では実質自己資本としてプラス評価される可能性があります。
そこで決算書を一目見てわかるように、銀行借入とは別に「役員借入金」の科目名で「固定負債」に表示すると良いと思います。

(2)役員報酬の役員借入返済への組替え
時々、次のような会社を目にすることがあります。
 ①会社は多額の赤字
 ②役員報酬が多額
 ③役員借入金も多額で、毎年残高が増加
会社から役員に対してお金が動く際に、役員報酬の場合は社会保険料や税金が徴収されますが、役員借入の返済であれば何も引かれません。
それならば、法人税等が発生しない程度に役員報酬を減額して、不足分を役員借入の返済へ変更したほうが資金の外部流出が防げます。

(3)私募債への組替え
社債として貸し付けて役員が利息をもらう場合には他の所得とは別計算になり、所得にかかわらず所得税・住民税の合計税率は20%となります。
現状の役員個人の所得税率が20%(合計税率30%)以上の場合には、役員借入金を社債(少人数私募債)に組み替え、利息をもらう代わりにその分役員報酬を減らした方が社会保険料や税金の節約になります。

(4)相続税対策
役員借入金はその役員の相続時に相続財産を構成しますが、その評価額は残高そのままの金額です。しかし、実際に返済できる見込みがない場合には、実質的に価値が低いものに対して余分な相続税が発生することになりかねません。
そこで、以下の方法で無駄な税金を減らすことができます。
 ①債務免除
 法人税の繰越欠損金の範囲内で債務免除することで、相続財産を圧縮することができます。さらに、自己資本も増加して銀行等の評価もアップします。
 ②増資
 役員借入金を資本金に振り替えることで、評価を圧縮することが可能で、さらに自己資本も増加して銀行等の評価もアップします。
ただし、地方税の均等割が増加したり、各種優遇税制の適用がなくなるケースもありますので注意が必要です。
 ③次の世代へ贈与
 贈与税には非課税枠が一暦年あたり110万円ありますので、他に贈与しているものがなければ、少なくともその範囲内で後継者等に贈与することはとても有効です。
また、その贈与された借入金を使って(2)のように後継者の役員報酬を減額して外部流出を減らすこともできます。

私はこれまで、上記のような対策をとらなかったため、ムダな税金を払っているケースをたくさん見てきました。
長い期間にわたって効果のある対策が多いため、なるべく早めに検討及び実行されることをお勧めします。

by 加古宗利