火曜日, 5月 25, 2010

いくら売ったらお金が足りるか

先月のブログにて損益分岐点の説明をさせて頂きましたが、損益分岐点はあくまで利益計算上のもので、資金繰りを考慮したものではありません。
「勘定あって銭足らず」という言葉があるとおり、利益とキャッシュの増減は通常一致しないため、その要因となるものを事前に把握しておかなければ、資金繰りに困るケースが出てきます。
そこで、今回は前回計算した損益分岐点に調整を加えて資金繰り上の売上分岐点の計算方法について書いてみたいと思います。

一般に、売上も仕入も現金決済で資産・負債の増減がない会社であれば、「利益=キャッシュの増減」となりますが、実際にはそういった会社は稀です。
多くの会社では売上や仕入は掛け取引となり、借入金の返済や運転資金の増減、減価償却費の計上があったりしますので、「利益≠キャッシュの増減」となります。

例えば、以下のような会社を例に、利益に対して不足しているキャッシュを計算してみます。
①借入金返済元金:年300万円
②売掛金:前年より100万円増加、棚卸資産と買掛金には変化なし
③減価償却費:年200万円
(上記以外、資産・負債に増減がなく、繰越欠損金は多額のため、当面納税はない)

①は、経費にならないがキャッシュが出ていくもので、他に設備投資の支払額や生命保険の積立額などがあります。
②は、下記の算式で計算した運転資金が増加ならば利益よりも資金不足に、減少ならば資金が増加していることになります。
 売上債権+棚卸資産-仕入債務
③は、経費であるがキャッシュが出ていかないものです。
上記①~③を集計して求められる、利益に対して不足しているキャッシュは以下のように計算できます。
 借入返済元金300万円+運転資金増加額100万円-減価償却費200万円=200万円

この不足分を固定費にプラスして損益分岐点の計算式に当てはめた金額が、資金繰り上の売上分岐点となります。
先月の例と同じように、上記の会社の損益分岐点等が以下の通りであるとします。
・売上合計:1,000万円
・限界利益率(1-変動費率):0.4
・固定費:500万円
・利益:▲100万円
・損益分岐点:1,250万円

この場合に、利益に対して不足している額が200万円ですから、固定費に不足額を足して、
資金繰り上の売上分岐点を計算すると以下のようになります。
(500万円+200万円)÷0.4=1,750万円

上記会社の分析結果は、
現状は売上1,000万円で利益が▲100万円、資金不足は300万円であり、利益がトントンになる売上は1,250万円(資金不足は200万円)で、資金を減らさないためには1,750万円売り上げなければならない、となるかと思います。

御社での計算結果はいかがでしょうか。
現状の売上よりかなり多額になった方が多いのではないかと思います。
資金繰り上の売上分岐点が達成できない場合で、キャッシュ残高を維持するためには、資産を売却したり、追加で借入をしたりすることになると思います。
前回の損益分岐点と今回の資金繰り上の売上分岐点は、経営上とても大切な指標となりますので、ぜひご活用いただきたく思います。

※上記の計算は、会社の取引形態や税務上の繰越欠損金の有無により、計算方法が異なる場合がありますので、ご不明な点等は、一度ご相談いただければと思います。

by 加古宗利