月曜日, 3月 29, 2010

「本をめぐる状況」

 最近、持ち運び可能なディスプレイ上で、デジタル化された書籍を「読む」電子ブックリーダが次々に登場しています。
 音楽は何年か前からデジタル化が盛んになっており、インターネットから好きな楽曲をダウンロードして、iPodなどで聴くということも主流になってきていますが、今度は書籍がデジタル化され、インターネット上で「配信」されるという形に変化していくかもしれません。

 私自身は、1日1~2冊の本を購入して読んでいるという立場なのですが、現在の「出版媒体のほとんどすべてが紙書籍であり、ある程度の規模の出版社の出版物でなければ全国書店に流通しない」という状況について疑問を持っていますので、この流れに期待しています。

 現在の紙書籍の状況ですが、日本で出版される書籍の数は雑誌を除いて1日あたり200点ほどです。その膨大な量の中で、誰もが手に取れる書店に並ぶということは大変なことになってきています。
 特に、現在は著者の過去の売上がデータベース化され、販売部がそれを見ながら出版部数を決めているという状況にあるようです。一度「売れない」とカテゴリづけされれば、次以降は全国書店に流通するほどの数を刷られず、従って流通機会の少なさにより販売部数が減り、さらに次回の出版部数が少なくなっていく・・・という悪循環に陥っているという声も聞かれます。
 実際に、人から薦められた本などを探そうとしても、書店には並んでおらず、ネット書店でも品切れや絶版となっており入手できないということも多々あります。

 電子ブックというのは、そうした状況を一部打開するのに役立つのではないかと期待しています。
 当然、すべての著作物をデジタル化し、無償化することがよいとは思いませんが、今のままの構造にしがみついていても、結局は業界全体が衰退していくしかないように思うからです。

 過去、本をめぐる状況はさまざまに変化してきました。印刷技術がなく、ごく少部数が一部の人にだけ行き渡る時代から、印刷された本が広く行き渡る時代、さらに「ベストセラー」によって出版業界全体が大きくなり、現在のように様々な分野の様々な本が出回る状況を経て、本をめぐる状況は今あらたな局面を迎えています。

 今までの収益構造が通用しなくなったときに、その構造を保護し、新しいものを否定することで権益を保護しようとしても、必ず行き詰まる時が出てくるでしょう。
変化が起こったとき、まずその変化の中身をよく知り、積極的に価値構造の転換に乗っていくことが、今後いっそう重要になっていくのではないかと思います。

by 安藤