金曜日, 3月 05, 2010

今、会社をたたんだら何が残るか?

会計事務所の仕事では、様々な会社の決算書を見る機会がありますが、その際に、「今、会社を清算したらどうなるか」という視点で見ることを意識しています。というのも、以前の職場で、「もう少し早く会社をたたんでいれば社長の自宅まで失う状態にならなかったのに」と残念に思う会社があったからです。
通常、銀行からの融資や個人資産の貸付けが可能な限り、会社は倒産することはないかと思いますが、それらが不可能になった時には、すでに手遅れとなっていることが多いです。最悪の場合、経営者の自己破産ということにもなりかねません。

そこで、事業の撤退時期の判断ミスを防ぐためにも、次の手順による決算書(貸借対照表)の簡易診断をお勧めします。
(1)資産合計に、下記の様なものをプラス・マイナスする。
①回収できない債権(不良売掛債権や貸付金など)をマイナス
②有価証券、ゴルフ会員権は時価との差額をプラス・マイナス(下がっているときはマイナス)
③有形・無形固定資産の合計をマイナスし、売却可能なもの(土地など)がある場合には、おおよその時価相場をプラス
④生命保険で解約返戻金があるものは、資産計上額との差額をプラス
(2)負債合計に、下記の様なものをプラス・マイナスする。
①返済しなくても許される同族関係者からの借入金等をマイナス
②リース契約で、未払計上されていないものをプラス
(3)(1)から(2)をマイナスする。

一般的には、(3)の金額が大きくプラスで、毎期安定的に利益が出ているということであれば事業継続良好と考えられます。また、(3)の金額がマイナスでも、個人資産(現金預金や換金性の高い有価証券など)を資産合計に加算してプラスになれば、その時点では会社をたたむことは難しくないでしょう。
一方、それでもマイナスのままであり、今後充分な利益が見込めない場合には、現状のまま事業を継続すべきかどうかご検討頂くことをお勧めします。このままではご自宅などの生活基盤を失い、ご親族に迷惑を掛けることも考えられるからです。

これは、一つのものさしに過ぎませんが、決算期ごとに比較することによって、会社の将来を考える良い材料になると思います。
ただし、多額な売却益が見込まれて税金が発生する場合や、特殊な取引が含まれる場合などは、上記のとおりにならないこともありますので、ご興味のある方は担当者までご相談いただければと思います。

by 加古宗利