火曜日, 8月 16, 2011

父の死

先月、父が亡くなりました。
70を目前に控えた69歳でした。

元来、保守的な考えの父は、そうではない私と昔から考えが合わないことが多く、意見を対立させることがよくありました。
それは、学生時代だけでなく、社会人になってからも続きました。
自分のしたい仕事を求めて転職を繰り返す私を、父はいつも心配していました。
今思えば、本当に出来の悪い息子でした。
それでも父は、しっかり者で孝行息子な兄と同じように、優しく接してくれました。

父は本当に真面目な人でした。
それは亡くなる前まで変わりませんでした。
死の直前まで、自分の身辺整理を一生懸命こなしていました。
自分の財産の整理をしたり、葬儀に使う遺影まで、写真屋で撮影してありました。
残された者が争ったり、苦労したりしないように。

亡くなる2週間前の父の日に、甚平をプレゼントしました。いつもプレゼントを受け取ることに遠慮がちな父に、柄違いのものを私も買ったといったら、喜んで受けとってくれました。
その服は、亡くなって自宅に戻ってきた際に、身にまとわれていました。
きっと、そうやってお願いしてあったんだと思います。

父は日曜日の未明に亡くなったのですが、実はその日の午後、病院に見舞いに行くつもりでした。
そして、今までの親不孝を謝りたいと思っていました。
直接伝えられなかった言葉は、通夜の後、棺に入れる寄せ書きに書きました。

「親孝行したい時に親はなし」とよく言われますが、本当にその通りとなってしまいました。
同じ過ちをおかさないように、残された祖母と母を支えられるように努力したいと思います。
そして、今という瞬間を大切にしていきたいと思います。

手術をして声帯のない父が、筆談で「あとはたのんだよ」とメモ用紙に書いてくれた文字が今でも目に焼きついています。

by 加古宗利