「訴えてやる!」の台詞でおなじみとなった法律を扱ったバラエティ番組や、法曹界を舞台にした小説や漫画などで、以前よりも法律の世界が身近に感じられるようになってきました。
ただし、それはあくまでも第三者としての視点であり、「裁く・裁かれる」立場になった自分の姿を考えたことはありませんでした。
こんな私でも、現実の世界で「裁く」立場になる可能性が出てきます。2009年春、裁判員制度が始まるからです。
10月1日が「法の日」ということもあり、制度のしくみや模擬裁判の様子などが、10月初旬の新聞紙上を賑わせていました。
色々な記事の中で私が最も驚いたのは、一生のうちで裁判員に選ばれる確率でした。調査機関によりその数字は多少違いましたが、およそ60から80人に1人が選ばれるそうです。
翌朝、満員の電車に揺られながら、「この中から1人は選ばれてしまうんだなぁ」と、何ともいえない気持ちになりました。
記事には「法律の知識は無くても大丈夫」などの耳に優しい言葉が並んでいましたが、自分が裁判員になることの怖さを払拭することはできませんでした。
その数日後、再審で無罪となった富山冤罪事件の記事を読み、プロでさえ間違ってしまうものに対して、素人である自分が参加してもいいのだろうかと、更に不安が増加していきました。
様々な不安が解消されない限り、どうやったら辞退できるだろうかと逃げ道を探す人が後を絶たないのではないでしょうか。現段階では、もちろん私も逃げ道を探す一人です。
前向きに理解しようとするこちら側の思いはもちろん必要ですが、この状況では、法に携わる側の説明責任が十分だとは思えません。
導入まで、後1年半となりました。今まで以上に、様々な方法で啓蒙活動が行われることでしょう。自分なりに納得できるよう、不必要に身構えずに自然体で受け入れたいと思っています。
ただ、名古屋駅にあるデパートの外壁に「大北海道展開催中」と「裁判員制度が始まります」の垂れ幕が、並んでかかっていたのには苦笑してしまいましたが……
by 宮内